東京高等裁判所 平成11年(行コ)242号 判決 2000年3月15日
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人の申立て
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、神奈川県に対し、金六三〇〇円及びこれに対する平成七年二月二日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、第一、二審を通じて、被控訴人の負担とする。
二 控訴人の本訴請求の趣旨
右控訴人の申立ての2項と同旨
第二本件事案の概要と当事者の主張
本件は、神奈川県議会議長であった被控訴人が、平成五年六月に国事行為として行われた我が国の皇太子と皇太子妃との結婚の儀及び饗宴の儀に、宮内庁長官から案内を受け、神奈川県(以下、単に「県」ということがある。)から旅費の支給を受けて出席したことについて、県民である控訴人が、右の旅費の支出が政教分離の原則を定めた憲法の規定に違反する違憲、違法なものであるとして、県に代位して、被控訴人に対し、右の旅費の額に相当する金員の返還を求めている住民訴訟事件である。
本件における当事者双方の主張は、原判決がその「事実及び理由」欄の「第三当事者の主張」の項で摘示するところ(ただし、控訴人の被控訴人に対する請求に関する部分に限る。)と同一であるから、右の摘示を引用する。
第三当裁判所の判断
当裁判所も、控訴人の本訴請求には理由がないものと判断するが、その理由は、原判決がその「事実及び理由」欄の「第五 争点についての判断」の項で説示するところ(ただし、控訴人の被控訴人に対する請求に関する部分に限る。)と同一であるから、右の説示を引用する。
すなわち、我が国の皇太子と皇太子妃との結婚の儀及び饗宴の儀が国事行為として行われたことを、社会通念に照らして違法とすることはできず、また、一面で宗教的な性格をも有する儀式である結婚の儀を国が国事行為として実施したことが、その目的と効果とにかんがみ、国と宗教との関わり合いという面からして相当とされる限度を超えるものとは認められず、したがって、被控訴人が、宮内庁長官の案内を受け、結婚の儀及び饗宴の儀に参列したことに、何ら違憲、違法の点は認められないものというべきである。
よって、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 涌井紀夫 裁判官 増山宏 裁判官 合田かつ子)